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名古屋高等裁判所 昭和57年(ネ)526号 判決

控訴人・附帯控訴人(被告)

田中百合子

被控訴人・附帯控訴人(原告)

佐々木崇行

主文

本件控訴及び附帯控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とし、附帯控訴費用は附帯控訴人の負担とする。

事実

控訴人(附帯被控訴人。以下「控訴人」という。)は、「原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。被控訴人(附帯控訴人。以下「被控訴人」という。)の請求及び本件附帯控訴を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、「原判決中、被控訴人の次項の請求を棄却した部分を取り消す。控訴人は、被控訴人に対し金一三七万〇五一九円及びこれに対する昭和五四年二月一〇日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。本件控訴を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠関係は、被控訴人において、「被控訴人の勤務していた建築会社では入社後五年目になると日当は九五〇〇円となる見込みであつた。」と述べ、当審における被控訴人本人尋問の結果を援用し、乙第一〇号証の成立は不知と述べ、控訴人において、前記被控訴人の主張を争い、乙第一〇号証を提出し、当審における証人倉橋勉の証言、被控訴人本人尋問の結果を援用したほか、原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。

理由

当裁判所は、被控訴人の本訴請求は、原判決の認容した金額の範囲で理由があるからこれを正当として認容すべきであるが、右金額を超える請求は理由がないからこれを失当として棄却すべきである、と判断する。その理由は、原判決書八枚目表九行目中「結果」の下に「(原審及び当審)、当審証人倉橋勉の証言及び同証人により成立を認める乙第一〇号証」を加え、同裏一行目中「約一年間」から同六行目中「転職の」までを「叔父のもとで一年半ほど大工見習いに従事したあと、昭和五四年一月一五日ころ倉橋建設株式会社に大工見習いとして就職し、間もなく本件事故に遭遇し、受傷にかかる上前歯三本の欠損を治療するために左右各二歯を支台歯とする橋義歯を装着したが、右義歯及びそれと対向する下歯の支持組織について恒常的に歯肉炎を生じ歯がぐらついたり出血し易い状態となり、その結果食物をそしやくしたり口に物をくわえたり歯をくいしばつてふんばる等を行う能力が減退して、大工仕事をするのに不便でありまた就業中に苦痛を覚えることもないではなかつたが、これがために大工職の業務に従事することに支障をきたすほどではないものと認められる。もつとも、控訴人は、同年八月三一日ころ倉橋建設株式会社を退職して、その後は大工関係の業務に従事していないが、そのことと前記後遺障害との間に因果関係があると認めるに足りない。右認定」に改めるほか、原判決理由と同一であるから、ここにこれを引用する。

そうすると、原判決は相当であつて、これに対する控訴人の本件控訴及び被控訴人の本件附帯控訴はいずれも理由がないから棄却を免れず、訴訟費用及び附帯控訴費用は各敗訴の当事者に負担させることとして、主文のとおり判決する。

(裁判官 舘忠彦 名越昭彦 木原幹郎)

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